精神科で働く作業療法士は、
「きつい」「大変」という声も多く、
実際に就職や転職を迷う方も少なくありません。
しかし、精神科には特有のやりがいや向いている人の特徴もあり、
正しい理解を持てば選択肢として大いに価値があります。
この記事では、精神科作業療法の仕事内容や大変な点、
向いている人・向いていない人の傾向について客観的な視点で詳しく解説します。
精神科への不安を少しでも和らげ、

自分に合った働き方を考える手助けになれば幸いです。


- OT歴15年以上、急性期OT
- 役職名は、係長
- 転職歴2回
- 回復期→在宅→急性期(現在)
- 2回の転職で年収250万Up
- 面接対策・転職ノウハウを発信
- @yuzu_ot_reha) (
精神科で働く作業療法士はきつい?現場のリアルを解説
精神科で働く作業療法士は、
「きつい」「難しい」と言われることがあります。
ここではその理由を、
- 仕事内容
- 感じやすい不安
- 離職理由
などから掘り下げていきます。
精神科OTの主な仕事内容とは
精神科の作業療法士が行う業務は、
身体機能の回復よりも精神機能や社会性の維持・改善に重点があります。
主な業務内容
- ADLや生活リズムの再構築支援
- 作業活動を通じた認知機能・情緒の安定支援
- 集団療法での対人スキル訓練、自己表現のサポート
- 退院後の生活設計や復職支援
- 精神科医、看護師、心理士など多職種との連携
身体機能への介入が少ない分、
目に見える回復が得られにくいという特徴があります。



この点が「やりがいを感じにくい」と言われる一因になることもあります。
他領域と比べてきついと言われる理由
精神科OTが「きつい」と言われるのには、
主に以下のような理由があります。
- 症状の波が大きく予測が難しい
- 長期入院が多く、関係構築に時間がかかる
- 介入の成果が見えにくく、評価が難しい
- 言動に配慮が求められ、精神的な緊張が続く
これらは、特に急性期や慢性期病棟において顕著に現れる傾向があります。
加えて、「危険行動に対する不安(暴言・暴力)」もよく挙げられます。
怖い・不安と感じる瞬間はどんなときか
精神科領域では、感情表現や行動が予測しづらいため、
次のような場面で「怖い」と感じる作業療法士は少なくありません。
- 閉鎖病棟での対応時
- 患者さんが突然怒鳴る・暴れる
- 自傷行為・自殺企図のリスク場面
- 治療的距離がとれず、依存的関係になりかける時
こうした場面では、



自分のメンタルがぶれてしまわないよう、一定の心理的距離を保つスキルが求められます。
実際に辞めた人の理由に多いこと
精神科から異動や退職を選ぶOTの声には、
以下のような傾向が見られます。
- 「患者との関係構築がうまくいかなかった」
- 「変化が少なく、達成感を感じにくかった」
- 「精神的に疲れてしまった」
- 「他領域のような動きのある支援をしたかった」
一方で、
「異動したからこそ、精神科の重要性に気づいた」という声もあります。



経験や価値観によって、向き不向きの感じ方が分かれる領域とも言えます。
精神科の作業療法士に向いている人の特徴5つ
精神科での作業療法は、身体機能の回復が中心の領域とは異なり、
対人関係・心理的な配慮・長期的支援が重要になります。
- 感情のコントロールができる
- コミュニケーションに柔軟性がある
- 変化を前向きにとらえられる
- 精神疾患への理解と関心がある
- チーム医療の連携を大切にできる
そのため、求められる資質や向いている性格にも特徴があります。
感情のコントロールができる
精神科では、
自分自身の感情をすぐに表に出してしまう人よりも、冷静さを保てる人が向いています。
具体的には、
- 相手の発言に動揺しすぎない
- 距離を取りつつ共感的に関われる
- 怒りや不安を引きずらず、気持ちを切り替えられる
といった力があると、職場でも安定した対応ができます。
コミュニケーションに柔軟性がある
精神疾患を持つ患者さんの中には、
「うまく話せない」「会話が成立しづらい」という方も多くいます。
そうした状況でも、
相手に合わせて関わり方を柔軟に変えられる人は、精神科に向いていると言えます。
たとえば、
- 無理に話そうとせず、沈黙も受け入れられる
- 相手のペースを尊重しながら関われる
- 言葉以外の非言語情報(表情・しぐさ)も読み取れる
こうした対応ができる人は、
安心感を与える存在として信頼されやすくなります。
変化を前向きにとらえられる
精神科領域では、小さな変化や一瞬の反応に価値を見いだせる人が活躍しやすい環境です。
具体的には、
- 「今日は目が合った」「笑顔が見られた」といった変化に気づける
- 課題に直面しても「どう関わればよかったか」と振り返れる
- 状況が変わっても柔軟に対応できる
このように、



結果ではなくプロセスを重視する姿勢が求められます。
精神疾患への理解と関心がある
精神科OTとして働くには、
やはり精神疾患に対する最低限の知識や関心が必要です。
ポイント
- 精神疾患の背景や症状に関心がある
- 「なぜこうなるのか」を考えるのが好き
- 支援方法を探求することにやりがいを感じる
知識がまだ浅くても、
「知ろうとする姿勢」があれば、成長していける領域です。
チーム医療の連携を大切にできる
精神科では、
医師・看護師・臨床心理士・精神保健福祉士などとの連携が非常に重要です。
単独で支援するよりも、
チームで動く場面が多いため、協調性のある人が向いています。
向いている人の特徴
- 報連相をしっかりできる
- 他職種の専門性を尊重できる
- 自分の役割を自覚して行動できる
「自分一人で何とかしよう」と抱え込むより、



「チームで支える」という意識が持てる人が活躍しやすいです。
精神科に向いていない人・注意したい性格傾向
精神科での作業療法には、
特有のストレスや配慮が求められるため、
ある一定の性格傾向が働きづらさにつながることもあります。
- 感情を引きずりやすい
- すぐに結果を求める
- 距離感がつかめない
ここでは、精神科に向いていないとされる代表的な傾向を3つ紹介します。
感情を引きずりやすい
精神科の現場では、
患者さんの言動に対して戸惑いやストレスを感じる場面があります。
その際、自分の気持ちを長く引きずるタイプの方は、
業務に支障が出やすくなります。
例
- 患者さんの暴言を深く気にしてしまう
- 1日の出来事を帰宅後まで思い出して落ち込む
- ネガティブな感情を切り替えにくい
精神科では、



距離感を保ちつつ支援する“割り切り”も必要になります。
すぐに結果を求める
精神科の支援は、
変化がゆっくりで成果が見えづらいという特徴があります。
そのため、短期間での成果や分かりやすい改善を求める人には、
不向きに感じられることもあります。
注意点
- 「リハビリしてるのに変わらない」と焦る
- 成果が数値で見えないとやりがいを感じにくい
- 長期的な関わりにモチベーションを維持しづらい
精神科は、目に見えない変化や関係性の構築に価値を置く領域です。
そのため、



結果志向が強すぎる人はギャップを感じやすくなります。
距離感がつかめない
精神科では、患者さんとの「治療的距離感」がとても重要です。
この距離感がつかめないと、依存やトラブルの原因になるリスクがあります。
具体的な場面
- 相談にのりすぎてプライベートな境界が曖昧になる
- 「自分が支えなければ」と感情移入しすぎる
- 逆に冷たくなりすぎて信頼関係が築けない
精神科では「近すぎず、遠すぎず」の絶妙な立ち位置が求められます。
精神科OTに関するよくある誤解と正しい理解
精神科作業療法には、外からは見えにくい特性があるため、
ネガティブなイメージや誤解が広がりやすい領域です。
- 拘束や暴力ばかりではない
- コミュニケーション能力だけがすべてではない
- 他領域より楽というわけでもない
ここでは、よくある3つの誤解と、その実際の姿を整理していきます。
拘束や暴力ばかりではない
精神科と聞くと、
「暴れる患者」「拘束」「叫び声」など、
極端なイメージを持つ方も多いかもしれません。
確かに急性期や重度の症例ではリスク管理が必要な場面もありますが、それは一部に限られます。
実際の現場
- 落ち着いた環境でじっくり関われる慢性期病棟も多い
- 援助的に関われば信頼関係が築けることがほとんど
- 暴力的な行動はチームでリスク管理されている
精神科といっても、病棟の性質や方針によって雰囲気は大きく異なります。



一括りに「危険」と捉えるのではなく、実情に目を向けることが大切です。
コミュニケーション能力だけがすべてではない
「話すのが得意じゃないと無理」と思う方もいますが、それは誤解です。
確かに関わり方は重要ですが、
傾聴や雰囲気づくり、表情の読み取りなど、非言語的なスキルも高く評価されます。
求められる力
- 相手の話をじっくり聞く力
- 言葉よりも態度で安心感を与える力
- 共感を示す姿勢や表情
つまり、饒舌である必要はなく、



丁寧な関わり方ができる人であれば十分に適性があります。
他領域より楽というわけでもない
他領域との違い
領域 | 身体的負担 | 精神的負担 | 変化のスピード |
---|---|---|---|
急性期 | 高い | やや高い | 早い |
回復期 | 中程度 | 中程度 | 中程度 |
精神科 | 低め | 高い傾向 | ゆっくり |
身体負担は少なくても、
向き・不向きは、単に「大変さ」で決めるのではなく、
自分がどこにやりがいを感じるかを基準に考えることが大切です。
まとめ|精神科のOTは大変。でもやりがいを感じる人も多い


精神科で働く作業療法士には、他領域とは異なる大変さがあります。
しかし、精神科作業療法には
人と深く関わる中でしか得られない「やりがい」があります。
時間をかけて信頼関係を築き、
少しずつ社会生活へと導いていく過程には、確かな意味と価値があるのです。
精神科という領域を選ぶことが、
あなたのキャリアや人生を豊かにする転機になるかもしれません。
一歩踏み出す勇気と、適切な情報収集があれば、



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