急性期病院で働く作業療法士は、
「きつい」「辛い」と言われることが少なくありません。
実際に現場に立つと、ハードなスケジュール、高い専門性、
重症度の高い患者対応など、心身ともに負荷の大きさを実感します。
この記事では、現役の急性期OTとして働く私が、
急性期ならではの厳しさや、そこから見えてきた“働く意味”について詳しく解説します。
同じように悩んでいる方に向けて、
リアルな現場の声とともに、やりがいや乗り越えるヒントもお伝えします。
「本当に続けていけるのか不安…」と感じているあなたの背中を、

少しでもそっと押せる記事になれば幸いです。


- OT歴15年以上、急性期OT
- 役職名は、係長
- 転職歴2回
- 回復期→在宅→急性期(現在)
- 2回の転職で年収250万Up
- 面接対策・転職ノウハウを発信
- @yuzu_ot_reha) (
急性期の作業療法士が「きつい・辛い」と感じる5つの理由
急性期病院に勤務する作業療法士の多くが、
「きつい」「辛い」と口にするのには明確な理由があります。
- 予期せぬ入院で患者との関係構築が難しい
- 時間との戦いで精神的な負担が大きい
- 身体的な疲労が蓄積しやすい
- 他職種との連携にストレスを感じやすい
- 成果を実感しにくくモチベーションが下がる
ここでは、急性期ならではの特有の負担を5つに分けて解説します。
予期せぬ入院で患者との関係構築が難しい
急性期の患者は、突然の事故や発症で入院してきます。
生活環境や心の準備が整っていない状態でのリハビリ開始は、
患者自身の戸惑いや抵抗感を強く招きます。
そのため、短時間で信頼関係を築きながら、
リハビリの必要性を理解してもらうという高度なコミュニケーション力が求められます。
- 「なぜリハビリが必要なのか」
- 「どんな効果があるのか」
を的確に説明しながら、同時に身体的な介入も行わなければならない状況は、
経験の浅いOTにとって大きな心理的負担となります。
時間との戦いで精神的な負担が大きい
急性期では、在院日数の短縮が至上命題となっており、
「早期離床」「早期リハビリ」が当たり前に求められます。
限られた時間の中で成果を出すために、
「1分でも早く離床させる」
「明日までに評価をまとめる」
といったプレッシャーが日々の業務に重くのしかかり、



“時間に追われる感覚”が慢性化するのが精神的に辛い点です。
身体的な疲労が蓄積しやすい
急性期では、リハビリの量が多い上に、
患者の補助動作が必要な場面が多々あります。
特にベッド上からの移乗や立ち上がり介助など、
全介助に近い作業を1日何回も繰り返すことになります。
- 麻痺が重度の患者の移動介助
- 拘縮の強い四肢への可動域訓練
- 人工呼吸器やドレーン管理下でのリハビリ介入
結果として、
腰痛や手関節の腱鞘炎など、職業病に悩まされるOTも多いのが現状です。



私も介助中にTFCC損傷しました…
他職種との連携にストレスを感じやすい
急性期では、医師・看護師・MSW・リハビリ科の他職種連携が密に求められます。
その中で、OTの視点やリハビリの必要性を的確に伝える必要がありますが、
他職種との認識のズレや、意見の対立がストレスの原因になることもあります。
とくにOTの介入意義が理解されにくい場面では、
- 「無理に入らなくていい」
- 「まだ時期尚早では」
などと言われることもあり、
専門職としてのアイデンティティが揺らぐ瞬間があります。
成果を実感しにくくモチベーションが下がる
急性期では、回復のスピードが読めず、退院時までの関わりが短いため、



自分の介入がどれだけ役に立ったんだろう..
と、成果が見えづらいという現実があります。
担当患者が数日で転棟・退院してしまうと、
関わりの浅さゆえに達成感を得にくい状況に陥ります。
このような環境では、
- 「本当に自分は役に立てているのか?」
- 「ただの作業の一部になっていないか?」
という不安や無力感を感じやすくなります。
急性期OTが抱える悩みと現場のリアル
急性期病院で働くOTの現場には、
想像以上に細かく厳しい課題が存在します。
- カルテや書類に追われる日常
- 短い入院日数で結果を出すプレッシャー
- 目標設定の難しさと患者とのズレ
ここでは、実際に急性期で働いて感じるリアルな悩みについて、
よくある3つのケースに分けて解説します。
カルテや書類に追われる日常
急性期のOTは、介入件数が多いだけでなく、
そのすべてに対して評価・記録を迅速に残す必要があります。
- カルテ記録
- リハビリ実施計画書
- 退院時サマリー
- カンファレンス資料
- 診療報酬請求の補助資料
介入後すぐに記録に取りかかれない日も多く、
業務時間後にまとめて書くことも少なくありません。
「リハビリをしている時間より、書いてる時間の方が長い」
と感じることもあり、
この“書類に追われる感覚”が慢性的な疲労の原因になります。
短い入院日数で結果を出すプレッシャー
現在の急性期病院では、DPC(診断群分類)制度により、
平均在院日数の管理が厳しく行われています。
そのため、OTには「短期間で明確な成果を出す」ことが求められがちです。
- 介入から2日以内に初回評価と方針提示
- 在院日数7日以内でのADL向上を求められる
- 主治医からのプレッシャー
とくに入院当初の状態が悪い患者ほど、
回復には時間がかかるにも関わらず、



数字での成果を急かされる矛盾に、苦しさを感じるOTも多いです。
目標設定の難しさと患者とのズレ
急性期は、患者の状態変化が激しく、
1日のうちにJCSや心身機能が変わることも珍しくありません。
このような状況でOTの目標設定を行うこと自体が難しく、
以下のようなズレが生じやすくなります。
患者の認識 | OTの課題設定 | ギャップの例 |
---|---|---|
動きたい | まずは安静・離床を安定させたい | 活動性にギャップがある |
歩けるから大丈夫 | バランス・認知機能に課題あり | 危険認知にズレがある |
リハビリは必要ない | 医学的に必要と判断 | 信頼構築が必要 |
このようなギャップがあると、
急性期で働くメリットとやりがいもある
急性期の現場は確かに厳しく、心身ともにハードな環境です。
ですが、そんな中にも作業療法士としての
成長ややりがいを感じられる瞬間が数多くあります。
- 多職種連携のスキルが身につく
- 医療知識・判断力が飛躍的に向上する
- 多岐にわたる疾患を経験できる
ここでは、急性期で働くからこそ得られる3つのメリットをご紹介します。
多職種連携のスキルが身につく
急性期では、さまざまな職種と毎日のように連携・相談が必要になります。
以下のような能力が自然と磨かれます。
- 医療用語や病態への理解が深まる
- 端的で的確な報告・連絡・相談ができるようになる
- 他職種の考え方を尊重しながら、自分の立場を明確にできる
とくに自分の意見を根拠を持って伝える訓練が日常的に行われるため、



OTとしての説得力や自信も身につきます。
医療知識・判断力が飛躍的に向上する
急性期では、脳血管障害・心疾患・外傷・がんなど、
命に直結する重篤なケースを多数経験します。
そのため、以下の力が自然と鍛えられていきます。
- 血圧・バイタルサインの読み取り力
- 意識レベル・認知機能の急変への対応
- モニター管理・ドレーンなどの医療機器への理解
- 安全に離床・移乗・歩行を行う判断力
緊急性を含んだケースに日常的に対応することで、



“命を預かる職種”としての自覚と判断力が格段に向上します。
多岐にわたる疾患を経験できる
急性期病院には、
毎日のようにさまざまな疾患の新患が入院してきます。
1年で対応する疾患数や病態のバリエーションは、
回復期や維持期の比ではありません。
- 脳出血、脳梗塞、くも膜下出血
- 心不全、狭心症、心筋梗塞
- 骨折、大腿骨頸部・脊椎圧迫骨折
- がん術後や化学療法中の患者
- 感染症による入院(肺炎、尿路感染症など)
これだけ多くの症例に関わることができる急性期は、



臨床経験を積むうえで極めて密度が高い環境と言えます。
急性期が向いている人・向いていない人の特徴
急性期病院は、
ここでは、実際に働いて感じた
「向いている人」と「向いていない人」の傾向を具体的にご紹介します。
環境の変化に強い人は向いている
急性期では、患者の状態や業務の流れが1日単位で大きく変化します。
スケジュールの変更、急なカンファレンス対応、
新患の入院による担当変更など、想定外の事態が日常茶飯事です。
向いているタイプ
- 柔軟な考え方ができる
- マルチタスクをこなすのが得意
- イレギュラーに対して焦らず対応できる
「変化を楽しめるかどうか」が、急性期で働くうえでの適性を大きく左右します。
マルチタスクが苦手な人には不向き
急性期は、“同時進行”が基本です。
介入、評価、記録、ミーティング、書類整理など、
1つの業務が終わる前に次の予定が入ってくるような状況が珍しくありません。
向いていない人
- 一度に複数の業務をこなすのが苦手
- スケジュール管理が苦手
- 先の予定が立てられないと不安になる
「一つひとつ丁寧に取り組みたい」
「静かな環境で集中したい」
という価値観を持つ方には、



急性期のスピード感が合わない可能性があります。
キャリアアップ志向の人には合っている
急性期では、最新の医療情報・技術に常に触れる環境に身を置けます。
向いている人
- 認定OT・専門OTを目指したい
- 医療現場の第一線で働きたい
- 多様な疾患に触れて臨床力を上げたい
また、急性期で培った経験は、



教育・管理職・研究職などへのキャリア展開にも直結する強みとなります。
【体験談】私はこうして急性期の辛さを乗り越えた


ここからは、私が実際に急性期で経験した「辛かった時期」と、
そこからどう乗り越えたかをお伝えします。



現在、私は急性期で10年以上勤務していますが、最初の1年は心が折れそうなほど大変でした。
最初は毎日泣くほどしんどかった
急性期に転職してすぐ、想像以上のスピード感と業務量に圧倒されました。
1日8~10名の患者さんに介入しながら、
評価・記録・カンファレンス資料を並行で進める日々。
初めての症例、聞き慣れない医療用語、時間に追われてカルテを書く日々…。



なんでこんなにしんどいんだろう…
と、帰宅後に泣いてしまうこともありました。
転職当初は体力的にも精神的にも、「辞めたい」と思った回数は数えきれません。
信頼できる先輩との出会いが支えになった
そんなとき、自分を変えてくれたのが、ある先輩OTの存在でした。
その先輩はいつも忙しい中でも
- 「大丈夫?」
- 「無理してない?」
と声をかけてくれて、自分が評価や記録に行き詰まったときも、
一緒に考えてくれる“安心できる存在”でした。
「1人で全部抱え込まなくていいんだ」と気づけたことで、気持ちが少しずつ楽になりました。
急性期では、



信頼できる仲間の存在が何よりも大きな支えになると痛感しています。
「患者の回復」に目を向けたことで楽になった
もう一つ、急性期の辛さを乗り越える転機になったのが、
患者さんの「変化」を実感できた瞬間でした。
急性期は、確かに関わる期間が短いですが、
少しずつ慣れてきた私は「忙しさ」に追われるより、
“今、目の前の患者のために何ができるか”
を考えることに意識を向けられるようになりました。
転職サイトを使って良かったと心から思えた
ちなみに、私は急性期への転職時に転職サイトを活用しました。
最初は「自分で探せる」と思っていましたが、
実際に求人を比較してもらったり、
病院の雰囲気や教育体制を事前に知ることができて、



安心して新しい環境に飛び込むことができました。
とくに急性期のようにハードな職場では、自分に合う病院を選ぶことが何より大切です。
「どこも一緒だろう」と妥協せずに、
信頼できるエージェントの力を借りて本当に良かったと今でも思っています。


まとめ|急性期OTはきつい。でも乗り越える価値がある


急性期の現場は、作業療法士にとって確かに厳しい側面があります。
しかしその反面、得られる成長ややりがいはとても大きく、
私自身も辛い時期を経験しましたが、
今は「転職してよかった」と心から思えています。
働き方の工夫や職場選びによって、急性期での働き方は大きく変わります。
- きついけど乗り越えてみたい
- 急性期でスキルアップしたい
そう感じている方には、



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