
OTで市役所勤務ってどうなの?



興味あるけど、狭き門の気がするよね。
「作業療法士としてこのままでいいのか…」と感じたとき、市役所というセカンドキャリアに興味を持つ方が増えています。
でも実際、作業療法士が市役所で働くって本当にあるの?どんな仕事?どうやって目指すの?
そんな疑問を解消するのがこの記事です。
本記事では、
市役所で作業療法士が活躍できる職場や採用ルート、向いている人の特徴、転職時の注意点までを現役OTの視点で詳しく解説します。



臨床とは違った形で地域に貢献したい、そんなあなたの選択肢の一つになるはずです。


- OT歴15年以上、急性期OT
- 役職名は、係長
- 転職歴2回
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- 2回の転職で年収250万Up
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- @yuzu_ot_reha) (
作業療法士が市役所で働くって本当にあるの?
「市役所で働いている作業療法士って、本当にいるの?」
多くのOTが、セカンドキャリアとして公務員や行政職を検討する中で、まず最初に疑問に思うポイントです。
結論から言うと、
- 医療職のOTが市役所にいるケースとは
- 直接的な採用は少ないがゼロではない
- 実は委託職員・嘱託枠で働いている人も多い
ここでは、作業療法士が市役所にどのような立場で関わっているのか、その実態を3つの観点から解説します。
医療職のOTが市役所にいるケースとは
まず、いわゆる“医療職”のまま市役所に所属している作業療法士は、ごく限られた自治体に限られます。
市町村が直営で保健センターや福祉部門を持っている場合に、まれに作業療法士資格を持つ職員が採用されていることがあります。
とはいえ、多くの場合、職名や採用区分に「作業療法士」と明記されていることはほとんどありません。
代わりに、以下のような職種枠で採用されている事例が存在します。
- 社会福祉職(福祉系学部卒+経験者)
- 地域支援員・包括支援担当
- 障害福祉相談員
- 会計年度任用職員(嘱託職)
つまり、「作業療法士としてではなく、福祉・相談の専門家として」行政の中に入る形が多いのです。


直接的な採用は少ないがゼロではない
実際に「作業療法士」を条件として募集している市役所は、ごくわずかです。
ただし、自治体によっては「歓迎要件」や「有資格者優遇」としてOT経験を評価している場合があります。
例として
- 東京都の一部区役所:地域リハ担当非常勤職員
- 大阪市:障害福祉課の生活支援コーディネーター
- 長野県:地域包括支援センター職員としてOT資格歓迎
こうした募集は大手求人サイトには出てこないことも多く、
自治体の公式HPや広報でひっそりと掲載されていることが多いため、定期的な情報収集が必要です。
実は委託職員・嘱託枠で働いている人も多い
「市役所で働くOT」と聞いて、
正職員をイメージする方が多いかもしれませんが、実際は“委託”や“非常勤”“嘱託”といった形で行政と関わるOTがほとんどです。
- 地域包括支援センターに週2〜3日勤務
- 要支援者のケアプラン支援を行う会計年度任用職員
- 特定事業(高齢者運動教室・認知症予防事業など)の実施担当者
こうしたポジションは「公務員」ではないものの、
市役所内の一員として行政の仕組みに関わるという点では、セカンドキャリアとして非常に有効な経験になります。
特に「臨床を完全に離れるのは不安」という方にとっては、



週数日の行政業務からスタートし、徐々にキャリアを行政寄りにシフトするという選択も現実的です。
市役所でOTが活躍できる具体的な職場
市役所の業務は“医療”ではなく“地域支援”に重きが置かれるため、OTとしての臨床スキルを間接的に活かす業務が中心となります。
- 地域包括支援センター(介護予防・生活支援)
- 障害福祉課(発達・身体支援)
- 健康増進課・保健センター(生活習慣病予防)
- 教育委員会や特別支援教育現場
ここでは、実際に作業療法士が配置・連携していることの多い市役所内の4つの職場について紹介します。
地域包括支援センター(介護予防・生活支援)
OTとの親和性がもっとも高いのが地域包括支援センターです。
ここでは、主に高齢者の介護予防や生活支援に関する業務を担います。
作業療法士の関与例
- 生活機能評価(基本チェックリスト、IADL調査など)
- 介護予防プログラムの企画・運営
- 高齢者の自立支援のためのケアマネジメント
- 家屋調査や福祉用具の相談対応
「現場に出なくても支援できる」
「予防の段階でアプローチできる」
という点に魅力を感じるOTが多く、非常勤職員や委託職員として採用されることが多いポジションです。
障害福祉課(発達・身体支援)
発達障害・身体障害を対象とする支援行政の現場でも、OTの知見は重宝されます。
主な業務内容
- 個別支援計画の作成やモニタリング
- 保護者・本人との相談対応
- 福祉サービス事業所との調整・連携
- 利用者ニーズに応じた福祉用具や住宅改修の助言
特に発達分野では、
OTが得意とする感覚統合や日常生活動作の視点が、教育・福祉のはざまをつなぐ役割を果たします。
健康増進課・保健センター(生活習慣病予防)
市民の健康づくりや保健活動を担当する部署でも、作業療法士が活動している例があります。
OTが関われる業務例
- 運動教室や栄養教室の運営支援
- 生活習慣病予防に関する啓発事業
- フレイル予防プログラムの実施
- 地域サロンでの健康講座や介護予防支援
臨床経験のあるOTが加わることで、市民一人ひとりの生活に根ざした支援設計が可能になります。



「地域の健康づくり」という広い視点で働きたい方には非常に適したフィールドです。
教育委員会や特別支援教育現場
近年増えているのが、教育分野でOTが求められるケースです。
特別支援学校や通級指導教室での生活動作支援や教員への助言などに関わることができます。
具体的には
- 発達に課題のある児童生徒の観察・支援計画づくり
- 学校内でのOT的アプローチ(姿勢・道具操作・行動調整など)
- 保護者・教員との三者連携による対応力向上
特に子どもと関わることが好きなOT、発達分野に強い関心がある人にとっては、新たなやりがいを感じやすい領域です。
OTが市役所職員になるにはどんな方法がある?
「市役所で働ける可能性はあると分かった。でも、どうやって採用されるの?」
これは多くの作業療法士がつまずくポイントです。
実際、市役所で働く方法は一つではなく、正規職員に限らず、さまざまな“入口”が存在しています。
- 福祉職や社会福祉職枠から受験する
- 会計年度任用職員・非常勤から目指す
- 民間委託事業経由で市役所関連部署に入る
- 公募や臨時採用を常にチェックする
ここでは、代表的な4つのルートをご紹介します。
福祉職や社会福祉職枠から受験する
市役所で正規職員(公務員)として採用されるには、公務員試験を受けて合格する必要があります。
この場合、「作業療法士」という枠での採用は稀で、多くは福祉職・社会福祉職・心理職などの枠になります。
ポイント
- 地方上級・中級試験の「社会福祉職」区分を確認
- 福祉系学部出身や現場経験が要件になることが多い
- 作業療法士資格は「加点」にはなるが、必須条件ではないことが多い
試験内容は教養試験(一般常識や数的処理)+専門試験(社会福祉・法律・行政)+面接など。



十分な対策と数ヶ月以上の勉強期間が必要になります。
会計年度任用職員・非常勤から目指す
近年注目されているのが、会計年度任用職員(いわゆる非常勤公務員)として市役所に入る方法です。
この制度は2019年から始まり、1年単位で契約される非常勤職員に、基本給や賞与が付与されるようになりました。
メリット
- 年齢制限がほぼない
- 経験や資格を重視して採用されることが多い
- フルタイム・パートタイムなど柔軟な働き方が可能
- 公的機関での実務経験を積める
作業療法士がこの制度で採用される事例としては、地域包括支援センターや保健センターでの生活支援相談員などがあります。
民間委託事業経由で市役所関連部署に入る
市役所の業務の一部は、
民間企業やNPOなど外部事業者に委託されているケースも多く、この委託先で働くことで“市役所の中の人”として業務に関わることができます。
例
- 介護予防教室の運営事業(OTが講師や指導者として配置)
- 高齢者の生活支援ニーズ調査
- 障害者就労支援プロジェクトの実施スタッフ
これらの案件は「公務員採用」とは異なりますが、
行政の現場で実績と人脈を築くことができるため、後の常勤登用や正規職員応募の際に大きなアピール材料になります。
公募や臨時採用を常にチェックする
市役所は定期的に、「臨時職員」「専門員」などの名称で専門性のある職種をスポット採用することがあります。
ポイント
- 市の公式ホームページや広報誌をこまめに確認
- ハローワークやPT・OT向け転職サイトも活用
- 応募から面接まで短期間で決まるケースもある
特に子育て中・Wワーク・短時間希望のOTにとっては、柔軟な働き方ができる良いチャンスになります。
市役所勤務が向いている作業療法士の特徴
「市役所で働くOT」というキャリアは魅力的に映る一方で、実際には臨床とは大きく異なる特性や業務環境が存在します。
- 地域全体を支える仕事に興味がある人
- ルールや制度に強く責任感を持てる人
- 現場支援から一歩引いた立場でも価値を感じられる人
ここでは、市役所勤務に向いている作業療法士の特徴を3つにまとめてご紹介します。
地域全体を支える仕事に興味がある人
市役所の仕事は、「目の前の個人」だけでなく、“地域全体の生活の質をどう高めるか”という視点で支援する仕事です。
- 地域包括支援や介護予防事業の運営
- 地域リハの普及啓発
- 高齢者・障害者の生活課題に対する制度的アプローチ
こうした活動に魅力を感じられる人は、行政の立場でも強いやりがいを感じられます。
臨床で得た「生活を見る視点」を、個人ではなく“まち”に活かす発想ができる方にぴったりの働き方です。
ルールや制度に強く責任感を持てる人
市役所では、国や自治体が定めた法律や条例、ガイドラインに基づいて仕事を進めます。
いわば、“自由に動くより、正確に遂行する”仕事が多くなるのが行政職の特徴です。
- 福祉サービス利用の判定・手続き
- ケアマネ・関係機関との調整
- 事業報告書や予算管理などの事務業務
これらを誠実に、責任を持って遂行できる人こそ、



市役所の職員として信頼され、継続的に成果を出していけるタイプです。
現場支援から一歩引いた立場でも価値を感じられる人
臨床のように「直接リハビリを提供する」機会は、市役所では基本的にありません。
その代わりに、間接的に多くの人を支える立場に立つことになります。
- 高齢者や障害者の制度利用をサポートする
- 市民の健康意識を高めるための企画を考える
- 地域資源や人的ネットワークを調整して問題を解決する
このように、“自分の支援が直接的に見えにくい環境”でも、
長期的な視点で地域を良くしていくという使命感を持てる人が向いています。



手を動かさなくても支援はできる
そんな新しい支援観を受け入れられるOTであれば、市役所でも十分に輝けると思います。


市役所転職を考えたときの注意点とアドバイス
市役所で働く作業療法士という選択肢には、多くの魅力があります。
しかし、実際に転職を目指すとなると、現実的な壁や制度の違いに戸惑う方も少なくありません。
- 採用枠は非常に狭く競争率も高い
- 試験制度や自治体ごとの違いに注意
- 臨床スキルは間接的に活かされることが多い
- 転職サイトで相談しながら視野を広げるのも有効
ここでは、押さえておきたい注意点と、今からできる準備のポイントをアドバイスとしてまとめます。
採用枠は非常に狭く競争率も高い
市役所の正職員採用枠(とくに福祉職・社会福祉職)は、非常に狭き門です。
- 年に1回あるかないかの募集
- 応募者が多く、倍率10〜20倍になることも
- 採用されても配属先が希望と異なるケースもある
そのため、「正規採用にこだわりすぎる」のではなく、
まずは非常勤や委託で“市役所業務に関わる”ところから始めるのが現実的です。
試験制度や自治体ごとの違いに注意
公務員試験は自治体によって内容・時期・受験資格が異なります。
- 教養試験(一般常識や数的推理)
- 論作文や適性検査
- 面接試験(福祉観・地域理解が問われる)
また、年齢制限が設けられている自治体もあり、30代後半以降では応募自体ができないケースもあります。
そのため、志望する自治体の過去の募集要項や実施状況を必ず確認し、半年〜1年前から計画的に準備を進めることが重要です。
臨床スキルは間接的に活かされることが多い
市役所での業務では、臨床のような直接的なリハビリ業務は原則ありません。
その代わりに、以下のような“間接的支援”が中心になります。
- 高齢者や障害者の制度利用を支える相談業務
- 地域事業の企画・評価・連携調整
- 保健福祉に関する啓発・研修の運営
「直接、対象者を支援したい」という思いが強い場合は、
このギャップに戸惑うかもしれませんが、「支援の枠組みをつくる立場」としてのやりがいに気づければ、むしろ長期的な活躍が見込めます。
転職サイトで相談しながら視野を広げるのも有効
市役所を目指すと決めつけすぎず、
まずは「自分に合ったセカンドキャリアとは?」という視点で幅広く情報を集めることも大切です。
作業療法士専門の転職サイト(例:PTOTSTワーカー、レバウェルリハビリなど)では、
- 「行政系に興味がある」
- 「地域包括支援に関わりたい」
といったニッチな希望にも対応してくれる場合があります。



まずは相談ベースでもOK。
視野を広げたうえで市役所という選択肢を再確認するくらいの姿勢が、結果的に後悔の少ない道になります。


まとめ|市役所で働く作業療法士という新しい選択肢


作業療法士としての経験を活かしながら、
地域に貢献できるセカンドキャリアを探している方にとって、市役所というフィールドは“知る人ぞ知る”選択肢です。
制度支援・地域づくり・高齢者や障害者への包括的アプローチなど、OTの視点が行政現場で求められる場面は確実に増えています。



ただし、採用枠は限られており、制度や業務内容への理解も不可欠です。
いきなり正規採用を狙うより、非常勤や委託から経験を積むルートが現実的かもしれません。
そのうえで、「自分にとって本当に合った働き方とは何か?」を見つめ直すことが何より大切です。
もし今すぐ市役所での勤務が難しいとしても、OTのキャリアは広く、深く、多様です。
まずは、PT・OT専門の転職サイトなどを活用して、視野を広げる相談から始めてみるのもおすすめですよ。

