
臨床だけでなく、教育にも携わってみたい
そう考える作業療法士の中には、養成校の教員というキャリアに興味を持つ方も少なくありません。
しかし、教員になるにはどんな条件が必要で、
実際どんな働き方なのかイメージしづらい人も多いのではないでしょうか?
この記事では、作業療法士が養成校教員になるための4つの条件と、その達成方法をわかりやすく解説します。
年収や働き方のリアル、求人の探し方まで詳しく紹介しますので、



教育分野にキャリアの可能性を感じている方は、ぜひ参考にしてください。


- OT歴15年以上、急性期OT
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作業療法士が教員になるには?まず押さえるべき前提


作業療法士が養成校教員を目指すには、
ただ「教えるのが好き」という気持ちだけでは不十分です。
まずは、教員になる前に理解しておきたい“制度的な前提”と、“臨床との違い”を整理しましょう。
養成校の種類と教員の種類
養成校には大きく分けて「専門学校」と「大学(短大・4年制)」の2種類があり、
それぞれで教員に求められる要件や役割が異なります。
養成校の種類 | 教員区分の一例 | 特徴と必要な資質 |
---|---|---|
専門学校 | 専任教員、非常勤講師など | 実務経験を重視/学生との距離が近い/授業と実習対応がメイン |
短期大学・大学 | 助教・講師・准教授・教授など | 学位(修士以上)が求められることが多い/研究・学会発表も重視される |
特に大学教員になる場合は、
また、OTの養成課程においては、
厚生労働省によって教員要件が定められており、一定の臨床経験も必須です。
臨床と教育の違いを理解しておくことが重要
現場での臨床スキルと、教える力は必ずしも同じではありません。
教育現場では、以下のような視点の切り替えが求められます。
- 「指導する」ではなく「育てる」視点が必要
- 正解のある医療判断よりも、「学生の成長プロセス」を重視する
- 長期的な視野で関わり、評価・フォロー・精神的支援も重要な業務
教育機関では、
「わかりやすく教える技術」「学生との信頼関係の築き方」も重要視されます。
そのため、自分の臨床経験をどう“教育コンテンツ”に落とし込めるかが問われる職種でもあります。
作業療法士が教員になるための4つの条件とは?
養成校の教員になるには、資格や経験だけでなく、
教育者としての姿勢や能力も求められます。
- 作業療法士免許+3年以上の実務経験が必要
- 教育・指導に関する知識や研修受講歴が重視される
- 高度な専門性・研究実績が求められることもある
- 養成校の方針に合う人物像(人柄・協調性など)
ここでは、作業療法士が教員として採用されるために満たすべき4つの条件を明確に整理します。
作業療法士免許+3年以上の実務経験が必要
まず最も基本的な要件が、作業療法士免許の保有と一定の臨床経験(原則3年以上)です。
- これは厚生労働省が定める「養成施設教員の資格要件」に基づいています
- 対象は臨床実習指導者、専任教員、主任教員などのポジション
- 一部の非常勤講師などでは例外的に短期間の経験でも可とされることがあります
そのため、臨床1〜2年目で教員を目指すのはかなり難しく、
ある程度の現場経験を積んでからのキャリアチェンジが基本です。



実際は、5年目以上の実務経験をもつOTが教員になっている印象です。
教育・指導に関する知識や研修受講歴が重視される
単に臨床スキルがあるだけでなく、「教育者としてのスキル」を備えていることが求められます。
- 文部科学省が義務化しているFaculty Development(FD)研修の受講
- 学校法人ごとの教員研修プログラムへの参加経験
- OJTや新人指導経験があるとアピールしやすい
特に採用面接では、
高度な専門性・研究実績が求められることもある
大学では、教員=研究者としての側面も強く求められます。
- 大学院修了(修士または博士号)が条件のことも多い
- 学会発表、論文執筆、研究プロジェクトへの参加歴があると優遇
- 専門領域が明確なこと(例:小児・精神・地域など)も加点要素になる
専門学校では必ずしも学位は求められませんが、
「研究実績がない=教育スキルが低い」と見なされる場合もあるため、
履歴書に書ける活動歴は重要な評価材料になります。


養成校の方針に合う人物像(人柄・協調性など)
教員は“個人の実力”以上に、“組織との相性”が重視される職種でもあります。
- 学生対応や他職種教員との連携など、人間関係力が問われる職場
- 「学生を伸ばす」意欲や「組織を理解して動ける」柔軟性が求められる
- 積極的に提案し、自己研鑽を続けられるタイプが評価されやすい
実際の採用では、「スキル」よりも「人柄」で決まるケースも多く、
面接では教育に対する価値観や熱意が特に重視される傾向があります。


教員の役割と求められるスキル
作業療法士としての経験を活かしつつも、
教育の現場ではまったく異なるスキルや姿勢が求められます。
- 授業設計・講義・評価業務とは
- 臨床指導や実習対応、学生支援も大切な業務
- 研究・学会発表も求められる場合あり
ここでは、養成校教員の主な役割と、それに伴って必要とされる具体的なスキルについて見ていきましょう。
授業設計・講義・評価業務とは
教員の中心業務は、「教えること」に加えて、その準備や効果測定も含まれます。
- シラバス作成(授業計画)や教材づくりが初任の段階から求められる
- PowerPointや動画などを活用した授業スキルも重要
- 定期試験・小テスト・レポートの作成と採点
さらに、「理解できる授業」ではなく「行動変容を促す授業」が評価されるため、



学生の反応を読みながら柔軟に進行する力が不可欠です。
臨床指導や実習対応、学生支援も大切な業務
教員は教室だけでなく、実習や学生生活全般に関わる役割も担います。
- 臨床実習先との連携・調整(指導者とのやり取り)
- 実習前後の面談、目標設定支援、実習中のフィードバック対応
- 精神的フォローや個別相談など“伴走役”のような役割も大きい
学生のメンタル面や生活面にまで寄り添うことが必要な場面も多く、
「教育=対人援助職」でもあるという認識が大切です。
研究・学会発表も求められる場合あり
特に大学では、「教えること+研究すること」の両方が教員の義務として設定されています。
業務内容 | 説明 |
---|---|
学会参加・発表 | 所属学会での年次大会などでの発表が求められる場合あり |
論文執筆 | 学内紀要や査読付き論文の執筆が義務づけられるケースも |
研究助成申請・倫理審査 | 学生研究指導・自らの研究テーマでの申請・IRB対応などが発生する場合あり |
これらの業務が苦手な場合、



専門学校では軽減される場合が多いため、キャリア設計の段階で見極めることが重要です。
養成校教員の年収・働き方はどう変わる?
教育現場での働き方は、病院や施設での臨床とは大きく異なります。
- 年収の目安と昇給の仕組み
- 勤務時間・休日・ワークライフバランス
- 臨床との違いで感じるギャップと魅力
ここでは、
養成校教員になった場合の年収の目安や労働環境の変化、ワークライフバランスの実情について見ていきましょう。
年収の目安と昇給の仕組み
教員の年収は、勤務先の形態や役職によって大きく変動します。
以下は一般的な目安です。(※養成校により差あり)
勤務形態 | 年収の目安 | 備考 |
---|---|---|
専門学校の専任教員 | 350万〜500万円程度 | 年功序列傾向あり/教職調整手当含む場合もある |
大学・短期大学の講師級 | 400万〜600万円程度 | 大学法人か公立大学かで差が大きい |
准教授・教授職 | 600万〜800万円以上 | 管理職・研究業績・学位に応じて加算される |
勤務時間・休日・ワークライフバランス
病院勤務に比べると、残業時間は少ない傾向にありますが、
“表に出ない業務”の多さには注意が必要です。
- 表面的には「土日祝休み」だが、教材作成や学生対応での持ち帰り仕事が多い
- 定期試験や入試、実習シーズン前後は多忙になりやすい
- 学会・研修参加も多く、プライベートな時間も“教育に活かす準備期間”になりやすい
そのため、「時間の自由がききやすい=楽」とは限らず、自律的に働ける人向けの職場といえます。
臨床との違いで感じるギャップと魅力
実際に臨床から教育へ転職した作業療法士からは、以下のような声が聞かれます。
ギャップ
- 「患者からの反応」と違い、「学生の成長」が時間をかけて見えるため達成感を得にくい
- 書類業務や会議が多く、医療職というより“教職員”としての動きが増えた
- “教える”だけでなく、“組織運営・雑務”も多く、想像以上に忙しい
魅力
- 自分の経験を教材化して後輩育成に活かせるのが嬉しい
- 学生が国家試験に合格し、臨床で活躍する姿を見ると感動する
- 長く働き続けられる環境で、年齢に応じた働き方にシフトしやすい
働き方としては「安定・成長・貢献」のバランスがとれた環境ですが、



それぞれの価値観によって合う・合わないが分かれやすい職場でもあります。
教員求人の探し方と転職の進め方
養成校教員への転職は、
一般病院とは異なる情報ルートや選考基準があるため、“どこで探して、どう動くか”がとても重要です。
- 求人はどこに出る?学校法人・求人媒体の違い
- 採用試験や面接対策のポイント
- 教育機関への転職支援があるエージェント活用法
ここでは、教員求人の探し方と、転職を成功させるためのステップを詳しく紹介します。
求人はどこに出る?学校法人・求人媒体の違い
教員の求人は、一般的な転職サイトには出てこないことも多く、
「公募情報」や「学校独自の採用ページ」を押さえることが重要です。
掲載媒体 | 特徴 |
---|---|
学校法人の公式サイト | 募集要項が詳細/選考プロセス・応募書類の指示が明確 |
PTOT向け求人サイト | 一部で教員求人の取り扱いあり/条件交渉や日程調整サポートが可能 |
日本作業療法士協会の掲示板など | 公的な募集情報が掲載されることもあり、精度が高い |
JREC-IN(研究者向け求人サイト) | 大学・短大の教員求人が集約/研究実績を重視する施設の求人が多い |
特に大学ポストや常勤教員の場合は「公募制」が基本となるため、こまめなチェックが必要です。
採用試験や面接対策のポイント
教員採用では、単なる「経歴」だけでなく、
教育に対する理解や指導への意欲が問われる選考が行われます。
- 書類選考では、職務経歴書+志望理由書+教育実践の計画書などが求められることも
- 面接では、「学生への関わり方は?」といった具体的な質問が中心
- 模擬授業を課されることもあり、スライドや板書・話し方のプレゼン力が求められる場面も
重要なのは、



“教育者としてどう関われるか”をアピールすることです。
教育機関への転職支援があるエージェント活用法
一部の医療系転職エージェントでは、
教育機関とのネットワークを持っていたりすることもあります。
エージェント名 | 特徴 |
---|---|
PTOT人材バンク | 養成校とのつながり/臨床+教育キャリアの相談に強い |
レバウェルリハビリ | 教員職の取り扱いは少ないが、転職戦略の立て直しに活用 |
PTOTSTワーカー | 教員求人の取り扱い実績/条件交渉・面接対策の支援が手厚い |
また、「今はまだ迷っている」「情報だけ知りたい」という段階でも相談可能なため、
早めに情報収集だけでも始めることがポイントです。



登録から利用まですべて無料です。


教員に向いている人・向かない人の特徴
「教えるのが好き」だけでは務まらないのが、養成校教員という職業です。
- 教育にやりがいを感じる人に向いている
- 組織運営・柔軟なコミュニケーションが必要
- 研究や書類業務が苦手だと苦労する面も
ここでは、実際に教員として求められる性格や姿勢をもとに、
向いている人・向かない人の特徴を整理します。
教育にやりがいを感じる人に向いている
教育の現場では、短期的な成果ではなく、長期的な成長を支える姿勢が重要です。
以下のような特徴を持つ方は、教員として高い適性があります。
向いている人の特徴 | 理由 |
---|---|
後輩や新人の成長に喜びを感じるタイプ | 学生指導に根気が必要/小さな変化を見守る力が重要 |
自分の知識や経験を言語化・整理するのが得意な人 | 教える=再構築する作業であり、教材づくりにも必要 |
学生との信頼関係づくりに前向きな人 | 指導だけでなくメンタル面のサポートも多く、丁寧な関わりが求められる |
計画性と柔軟性を持ち合わせたバランスタイプ | 教務・実習・行事対応などタスクが重なり、効率よく動く力が必要 |
地道に準備・改善を続けられるタイプ | 教材づくり・講義内容の見直しが継続的に求められるため、反復を苦にしない姿勢が大事 |
組織運営・柔軟なコミュニケーションが必要
学校という組織では、教員間・事務方・外部機関との連携が非常に多いです。
- 実習調整では、臨床施設や外部指導者との丁寧なやり取りが求められる
- カリキュラム検討や試験運営では、他教員とすり合わせる場面も多い
- 言い方ひとつで学生を傷つけてしまうこともあり、言語・非言語での気遣い力が大切になる
つまり、「個人プレー」ではなく、
「チーム教育」の中で動ける人が求められる環境です。
研究や書類業務が苦手だと苦労する面も
教員の業務には、事務作業や研究活動など、“裏方的なタスク”が想像以上に多いのも事実です。
苦手だとギャップになる業務内容 | 補足 |
---|---|
成績処理・出欠管理・学内会議 | 膨大な書類処理が求められる期間もある |
学会発表・論文執筆・研究倫理対応 | 特に大学勤務では、年に数本の成果が求められる場合もある |
保護者対応・学生トラブルの対応 | 一般的な職場よりも“教育者としての振る舞い”が強く求められる |
そのため、
「現場で動いていたほうが楽しい」
「対話は得意だけど書類は苦手」
という人にとっては、最初は負担に感じることがあるかもしれません。
まとめ|養成校教員は臨床経験を活かすキャリアの一つ


教育現場では、臨床では得られない「学生の成長を支える喜び」や「長期的なやりがい」があります。
もちろん簡単な仕事ではありませんが、
自分の経験を“未来の医療人”に還元できる職場です。
- 「将来、教育に関わってみたい」
- 「新たな働き方に挑戦したい」



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